SNSで見つけた投球ドリル、どれをやればいい?
「球速アップには、この練習」
「コントロールを良くするなら、このドリル」
InstagramやYouTubeには、さまざまなピッチング練習が紹介されています。中学生・高校生の投手にとっても、自分の課題を解決するヒントを探せる身近な場所になっています。
ただ、良さそうな練習を見つけるたびに取り入れていても、それが今の自分に必要なものとは限りません。
選手自身はもちろん、お子さんの練習を考える保護者の方や、選手を指導する方にも、ドリルを選ぶ前に整理してほしいことがあります。
「どんな投手になりたいか」から、必要な練習を考える
まず、その選手が目指しているゴールは何でしょうか。
球速を上げたい。ストライクを安定して投げたい。試合で任されるイニングを増やしたい。
そこから、今の投球と目標の間に何が足りないのかを考えます。
例えば「球速を上げたい」という目標があっても、力を発揮するための身体づくりが必要なのか、持っている力を投球につなげる動きを練習したいのか。現在地によって、優先する内容は変わります。
ゴールを決める。現在地を知る。足りないものを整理する。そのうえで、必要なドリルを選ぶ。
この順番を大切にしたいと思っています。
動画を見て「これをやってみたい」と興味を持つのは良いことです。そこからもう一歩、「今の自分の何につながる練習なのか」まで考えてみてください。
そのドリルに取り組める身体の準備はできているか
練習の目的が合っていても、難易度が今の選手に合っているかは、別に確認する必要があります。
例えば、片脚で身体を支えながら回旋するドリル。投げる部分に意識が向いていても、その前に姿勢を支えること自体が難しければ、狙った動きに取り組めないことがあります。
関節を必要な範囲で動かせるか。姿勢を保てるか。動かしたい部分を、自分でコントロールできるか。
外から見た動きが似ていても、別の場所で無理に補っているかもしれません。それに気づかず繰り返すと、「やっているつもり」の練習になってしまいます。
PitchersAcademyのフィジカル指導でも、こうした身体の機能や特徴を確認しています。
ドリルが難しいときには、動きを分ける、支えを使う、身体の準備から取り組むなど、今できる段階に調整することも必要です。
難しい練習ができることを目標にせず、選手の成長につながる難易度を選びたいと考えています。
同じ姿勢、同じ道具でも、練習の狙いまで再現できているとは限らない
動画と同じ姿勢をとる。同じトレーニングギアを使う。同じ順番で身体を動かす。
まねをすることは、入り口としてあっていいと思います。ただ、それだけで、その練習で身につけたいことまで再現できているとは限りません。
例えば、チューブを使う練習でも、どの方向に抵抗がかかっているか、身体のどこで支えているか、どのタイミングで力を発揮するかによって、取り組んでいる内容は変わります。
道具を使うことや、特徴的な姿勢をとること自体が目的になってしまうと、肝心のポイントが抜け落ちてしまいます。
確認したいのは、次のようなことです。
・何を身につけるための練習なのか
・どの姿勢や動きに意味があるのか
・どこで力を発揮し、どこは力みすぎないようにするのか
・力を発揮するタイミングはいつなのか
・身体の動きやエネルギーが、どのようにボールへつながっていくのか
見た目を合わせるところから、動きの中身を理解するところまで進んでほしい。
そして、ドリルでつかんだ感覚を、普段の投球でどう活かすのかまで考えてみてください。
中学生・高校生には、自分が取り組んでいる練習について、「なぜこれをやるのか」「何を意識しているのか」を、自分の言葉で説明できるようになってほしいと思っています。
これは、小学生の練習にも当てはまる考え方です。年齢や理解度に合わせて伝え方を工夫しながら、目的を共有することが大切です。
必要だと見極めた練習には、腰を据えて取り組む
自分に必要な練習を選んだら、身につけるための時間も確保したいところです。
一度やって球速が上がらなかった。数回試しても、うまくできなかった。それだけで次のドリルへ移っていては、練習した動きを自分のものにする時間が足りません。
課題や習得の状況に応じて、1週間、2週間、3週間と、ポイントを確認しながら繰り返す。その中で、できなかった部分や、少し変わってきた部分を確かめていきます。
これは「何週間やれば必ず効果が出る」という意味ではありません。
徹底して取り組むとは、目的とポイントを押さえ、できるようになる過程まで丁寧に積み重ねることです。
毎回、狙った動きに取り組めているかを確かめ、必要なら難易度や取り組み方を調整する。回数をこなすだけで終わらせず、練習の中身を確認していきましょう。
球速やコントロールに変化が出る前にも、意識した動きができる場面が増えたり、自分で違いに気づけたりすることがあります。
結果と取り組みの両方を見ながら、続けるべきことと、修正することを判断していきたいと思っています。
「結局、自分は何をやるべきか」を一緒に整理する
情報が多いからこそ、練習を知っていても、自分に何が必要なのか分からなくなることがあります。
PitchersAcademyでは、選手のゴール、現在の投球、身体の特徴、本人が感じている課題を確認しながら、取り組むことの優先順位を整理しています。
今、何を伸ばしたいのか。
そのために、何が足りないのか。
投球ドリルに進む前に、準備することはあるのか。
選んだ練習を、どのように身につけていくのか。
この「交通整理」が、私たちの指導で大切にしている役割です。
川越・狭山・東松山で行う投球指導でも、フィジカル指導と連携しながら、一人ひとりに必要な練習を考えています。
選手自身が「今、これに取り組む理由」を理解し、納得して練習できるようにする。そして、取り組んだ先の変化を一緒に確かめる。
SNSで見つけた一つのドリルも、その選手のゴールにつながる練習として活かしていきたいと思っています。


